予防歯科

はじめに

みなさま内科的な健康診断や人間ドックなど、定期的に受けている方は多いと思いますが、では歯の定期検診はいかがでしょうか。
とくに痛みもないし、『歯医者さんは痛くなってからいくところ』と思っている方も多いと思います。

しかし雑誌プレジデント紙の特集で、シニア(55~74歳男女)1,000人に調査した『リタイア前にやるべきだった…後悔』トップ20という記事で、なんと!!
第1位が歯の定期検診を受ければよかったという後悔が最も多かったということです。
2位以下は「スポーツなどで体を鍛えればよかった」「日頃からよく歩けばよかった」「暴飲暴食をしなければよかった」など、運動や食事に関するものですが、それらをおさえて「歯」の後悔が1位になっているのです。

もし早くから定期検診を受けていたら…
10年後20年後に後悔しないために、食べる楽しみがなくなってしまわぬように、今から一緒に対策を講じてみませんか?

定期検診は歯を守る

国別定期検診と残存指数のグラフ

現在、日本の80歳の方に残存している歯の本数は平均8 .8本です。
それに対しスウェーデンでは平均20本以上、アメリカでは17本とたくさんの歯が残っています。
またむし歯にかかったことのない状態を「カリエスフリー」といいますが、日本人の20歳でのカリエスフリーはたった4%と、先進国ではかなり低い数値です。
スウェーデンでは19歳の国民のなんと60%がカリエスフリーというのです。この違いはいったいなぜなのでしょうか?
実は、予防先進国のスウェーデンでは90%以上の方が定期的に歯科を受診しています。
アメリカでも80%以上の受診率を保っています。その結果が80歳の方の高い歯の残存率であり、カリエスフリーの若者の多さなのです。
しかしながら、日本の受診率はわずか2.2%…圧倒的に低いことがわかります。

残存歯数のグラフ

上のグラフは定期検診を受けている方と、何かあった時にのみ治療を受けた方の残存歯数を表しています。
ブラッシングを自分なりにしっかりして治療をきちんと受けていても、80歳の時点で歯の数はわずかに6~8本しか残っていません。
ところがきちんと定期検診を受けていた人は80歳でも約16本残っています。定期検診を受けている人と、そうでない人とでは80歳になった時、その残存歯数に約10本近くの差が出るというデータです。
悪くなったら治す、痛くなったら行くの繰り返しで歯はどんどん失われてしまいます。
では、1本でも多くの歯を残すために何が大切なのか、当院での症例をもとにメンテナンスで大切にしていることをお話させていただきます。

当院のメンテナンスについて

当院では「治療が終了し安定したお口の状態を持続させる」という目標のために、定期検診は最も重要と考えています。
したがって患者さんのお口の状態に合わせて3カ月~6カ月ごとの定期検診を設定しております。
また歯周病の治療からメンテナンスまで一貫して担当の衛生士が行います。
歯周検査・ブラッシングの指導・生活習慣へのアドバイスなど、きめ細やかなサポートをいたします。
またその都度、歯科医師と連携をし、長期的な安定を目指します。

注目する4つのポイント

レントゲン写真

レントゲン写真

当院では年に1回むし歯のチェックのためレントゲン撮影を行います。
また重度の歯周病治療を行った方の骨の状態を確認するためにも、レントゲンを撮り経過をみていきます。

歯周ポケットの検査

歯周ポケットの検査

歯周ポケットを確認することで、歯周病の再発はないか、出血による炎症の進行はないかチェックを行います。

プロフェッショナルケア(PMTC)

プロフェッショナルケア(PMTC)

お口の中のバイオフィルム(細菌の膜)を除去していきます。

ブラッシングの確認

ブラッシングの確認

お家でのブラッシングの状態を確認し、患者さん自身にも把握していただくため染め出しを行います。

むし歯は早期発見!早期治療!が歯を残す秘訣

むし歯の治療が終了すると「治った、もう大丈夫」と安心してしまう方は多いと思います。
ですが、1度治療したところこそ管理が大切です。残念ながら歯は一度削ると再生することはありません。
むし歯でおかされたところを人工物で補っているだけです。まさに義足をつけていることと同じ状態です。
実は、むし歯で痛みを感じるというのは、神経にまでむし歯菌が感染してしまった時です。むし歯は自覚症状なく進行していきます。
痛みが出た時にはかなり重症となっているケースがほとんどです…そのため、検診の時にむし歯のチェックをしたり、定期的にレントゲンを撮ることによって、歯と歯の間のむし歯や銀歯の下のむし歯を、早期に発見して治療することができます。また経過を追って見ていくこともできます。

歯を残す秘訣

歯周病のアフターケアは?

現在成人の80%が歯周病と言われています。歯周病は進行すればするほど治療は難しくなり、歯のぐらつきに気づいた時には手遅れになるケースが多いのです。
日本人が歯を失う原因のトップである歯周病こそ良い状態を維持するには、メンテナンスが必要不可欠になります。
ではメンテナンスを怠るとどうなってしまうのでしょうか?

歯科医院の受診が10年ぶりの患者さん

歯科医院の受診が10年ぶり

歯ぐきは腫れて炎症が広がり支えている骨が弱くなり今にも抜けておちてしまいそうです。

歯周病の治療後メンテナンスで維持している患者さん

歯周病の治療後メンテナンス

歯周病は生活習慣病です。お口の中の細菌はゼロにはなりません。
歯垢や歯石にはたくさんの細菌が含まれていて、これらが原因で歯周病を悪化させていきます。
一度歯周病におかされたところは改善したとしても、ちょっとした油断で再発しやすくなります。
注意深く経過を見ていき、長期にわたって再発させないことが大切です。

専門的なプロフェッショナルケアを!

歯と歯の間の隙間に歯石がついているのを気にしている方は多いと思います。
磨きにくい部分には歯垢が残りやがて歯石になってしまうとブラッシングでは取れなくなってしまいます。そうなったら私たちの出番です。
付着してしまった歯垢や歯石を、専門の器材を使って除去していきます。

専門的なプロフェッショナルケア

お口の状態は患者さんそれぞれ異なります。
一人一人にあったプロフェッショナルケアを行うことで、リスクの高い部分をフォローアップしていきます。

また噛み合わせの調整や全身疾患の状態、お薬の服用内容、そして喫煙状況も、お口の中を長期間安定していく上で大切なことです。
何か変化がありましたら担当の衛生士にいつでもご相談ください。

どうすればむし歯と歯周病を予防できるの?

「歯科医院に通っていれば歯周病は治るだろう」「むし歯の心配もない」「クリーニングしてもらっているから大丈夫」と考える方はいるかと思います。
実は定期的なクリーニングだけでは歯は守れないのです。最も大切なことは患者さん自身による毎日の正しいブラッシングです。
正しいブラッシングのやり方を習得していただき、それを習慣化していくことがとても重要になります。

そのために当院では、みなさまに歯みがき上手になっていただくため、ブラッシングの確認・指導・練習の時間が大切だと考えています。

1染め出し後 2ブラッシング指導 3ブラッシング練習 4次回メンテナンス時1~3を繰り返し行います

おわりに

下の写真は痛くなったら歯科を受診し、治療だけを受け続けた患者さんの写真です。
治療だけを受けていると再治療の繰り返し、やがて銀歯だらけになり、いつの間にか歯を失ってしまいます。

患者さんの写真

こちらは当院にて、メンテナンスで維持のし易い形態に改善し安定している症例です。

患者さんの写真

病気や加齢、生活環境や精神面の変化…同じ患者さんであっても長いメンテナンスの間には、置かれている状況や身体的・精神的状態が変わりお口の中も影響を受けると思います。
1本でも多く歯を残せるように、そして笑顔あふれる豊かな人生のために、当院では全力で患者さんのお口の中のサポートをさせていただきます。